経
営
面 |
1.社会的信用の高まり
法人として事業性が明瞭となり、社会的な信用が高まる。
2.経営の合理化
家計と経営が分離される。事業部分に法人会計を導入することにより適正な財務管理が可能となり、適性な医院経営が可能となる。
3.分院の開設、付帯業務
個人では認められていなかった分院開設、有料老人ホームの開設等の付帯業務が可能となり、介護事業に参入出来る。
4.厚生年金に加入できる
法人を設立することで役員も従業員も厚生年金に加入することが出来る。
5.医療機関の存続
理事長に万が一のことがあったとしても、次の理事長を選任するなど一定の手続きを経ることで医院を存続することが出来る。
6.決算月が自由
個人事業主(12月が決算月)と異なり、決算月を自由に設定できる。また、一定の手続きで変更も可能である。
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1.解散等につき制約がある
医療法人は永続するものであるという考えから安易に医療法人を解散することは望ましくなく、解散するには都道府県知事の許可を必要とする。
また、経営等の理由で個人診療所に戻ることも原則できない。
2.社会保険の強制加入
法人化すると、従業員の社会保険(厚生年金)が強制加入となる為、経費負担額が増大する。
3.事務手続きの複雑化
決算ごとに決算届、財産目録等の書類作成が義務付けられ、書類作成等の事務手続きが複雑である。また、役員変更等の登記手続きも必要である。登記手続にはコストがかかる。
4.プライベート資金の減少
法人の資金は個人のものではないので、生活費は給与だけでまかなわなければならない。個人と法人の間での給与、家賃以外のお金のやり取りは基本的に貸借(貸付金、借入金)関係が生じる。
5.業務制限
医療法人は法律に規定されている業務以外は出来ない。営利目的の事業ができない。
6.役員を設置しなければならない
役員3名 監事1名(親族以外)の選任が必要である。
7.行政の管理下に置かれる
医療法人は都道府県知事に決算書を提出する義務があり、行政の管理下に置かれる。
8.剰余金の配当が出来ない
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承
継
面
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1.事業承継の円滑化
出資持分を移動させるだけで贈与・譲渡が成立するため、贈与・譲渡の手続が個人事業主と比較して煩雑でない。
2.財産評価の計算上有利になる
法人の相続時の評価は出資金のみで行うため内部留保がある相続時に有利になる。
また個人が法人に土地を賃貸している場合は当該土地の相続時評価額が下がる。
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1.残余財産が国庫に帰属する
法人を解散した場合の残余財産は個人ではなく国庫等に帰属する。
2.欠損が生じている場合の評価
欠損が生じている場合でも相続時の評価は出資金で行う為、欠損が積み重なっている場合の相続時の評価については不利になる。
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税
金
面
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1.給与所得控除
院長の個人所得が医療法人からの給与所得となり、給与所得控除が受けられる。
2.税率面の優位性
所得税は超過累進税率、法人税は2段階比例税率を適用しており、高額所得者になればなるほど税額的に有利となる。
例)
所得税率40%
住民税率10%
↓
法人税率
所得800万まで18%
800万超は30%
(住民税を合わせて実効税率30%〜36%)
3.所得分散
奥様等の家族の方を役員にすることでその職位に応じた役員報酬を支給することが出来、所得分散により節税が可能となる。個人事業者の専従者給与とは異なり、非常勤役員であっても相当額であれば経費にすることが出来る。
4.役員退職金
医療法人にすることにより役員が退職する際に役員退職金を支給することが出来、退職金が法人の経費になる。
5.社保収入の源泉徴収がない
個人では社保収入について源泉が差し引かれて入金されるが法人では源泉徴収されないため、資金繰りが円滑になる。
6.生命保険料の経費算入
個人で掛けた院長の生命保険は生命保険控除として上限5万円の所得控除であるが、法人契約で契約すると契約内容によるが法人の経費にできる。
7.繰越欠損金
個人でも法人でも一定の要件を満たせば生じた赤字は繰り越して控除することが出来る。個人では3年繰り越せるのに対し法人では7年である。
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1.交際費課税
個人では交際費は全て経費になっていたが法人では交際費のうちの一部が経費にならない。交際費支出額の90%のみが経費となり、さらに支出額のうち600万円を超える部分は経費にならない。
2.貸倒引当金の繰入率が低い
個人 → 5.5% 法人 → 0.6%
3.小規模企業共済の解約
医療法人では小規模企業共済に加入できないため、個人時代において掛けている小規模企業共済は解約しなければならない。
↓
小規模企業共済を解約して一時金を受け取ることとなり、個人で所得税(退職所得)が発生する。小規模企業共済による所得控除も受けれない。
↓
医療法人下では再加入できない
*倒産防止共済掛金についても同じである
4.貸付利息
個人が法人に金銭等を貸し付けた場合には貸付利息が発生し、法人の利益になる。
5.地方税の額が上がる
地方税(都道府県、市区町村の均等割)の額が上る。
6. 65万円の青色申告控除が受けられない
個人事業者時代に受けていた青色申告控除(65万円)を受けることが出来ない。
7.役員報酬の規制
役員報酬は毎月同額でなければならない。また役員に対する賞与は原則として経費として認められない。
8.個人の役員報酬に係る源泉所得税
個人の役員報酬(給与)については源泉所得税を差し引いた金額で支給される。
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